ディオバンの問題でとうとう逮捕者が出てしまいましたね・・。
現場で働く薬剤師の皆さんなら、メーカー主催の勉強会でこう思ったことはないですか?「これって、自社製品にとって都合のいいデータばかり見せてんじゃないの?(笑)」
統計データって見せ方でどうにでもできるんですよね。グラフの目盛りを変えるだけですごく効果が出たみたいに見せることも可能です。要は作図の技術で、かなりの部分お化粧できるということです。でも今回のディオバン事件はちょっと事情が異なります。
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ノバルティスの社員が身分を隠して、ディオバンの優位性を確認する論文実験に加わっていた。
⇒たとえて言うなら、受験の問題の採点を受験生自身に行わせていたのと同じことですね。
しかも自分が受験生でないふりをして、採点側に回っていた。
不正行為をするつもりがなくても、倫理的に問題がありますよね?
普通は利害関係のない第三者が行うべきです。
問題1で指摘したように、受験生に自分の答案を採点させている状態を想像して下さい。
まあ、そうした状況でやることはひとつですよね?
そう、自分の点数が上がるように答案用紙を消しゴムで消して書き直してました!
さらに、ディオバンを服用していないグループの脳卒中発生件数も改ざんしていたことがわかっています。
つまり、自分以外の受験生の採点にも手を加えて、正解でも×にして点数を下げていたということです。
ノバルティス側から研究に参加してくれる大学に多額の寄付金が渡っていた。また対象患者確保の勉強会の費用もノバルティスが負担し
医師個人にも講演の謝礼を支払っていた。
これは、採点者の所属する組織に寄付金を渡して、採点者自身にもお小遣いを渡していたのと同じですね。
今回の事件(とうとう逮捕者が出てしまいました)は非常に重大な問題を含んでいます。
処方薬の選択というのは、当然、「効果・効能」を基に医師が判断を行います。
そして、この「効果・効能」つまり「この薬は何に効くか?、またどういった効果が期待できるのか?」というのは、非常にシビアな統計解析に立脚して判断されます。
統計的に有意か否かがすべてです。
「効果・効能」を謳えるのは唯一、『医薬品』だけなのです。
よって、その統計データならびに統計解析は神聖かつ不可侵なもののはずです。
統計データはすべての基点になるものであって、ここがデタラメだと、そこから派生するすべてのものがデタラメになってしまいます。
そして、上記の不正行為の甲斐あって!?、ディオバンは発売から14年で1兆2千億円も売れました。
ARBは各社強い商品が多いです。
ニューロタン(ロサルタン)、ブロプレス(カルデサルタン)、ミカルディス(テルミサルタン)、オルメテック(オルメサルタン)など
そもそも嘘の優位性ゆえに他社のARBではなく、ディオバンを処方薬として医師が選択したということであれば、当然その選択は誤りであったということになります。
少なくともディオバンである必要は全くなかったということになります。
本来、異なるARBが選択された可能性が十分あったことは明白です。
ところで今回の事件、逮捕された元ノバルティス社員単独の犯行なのでしょうか?それとも会社ぐるみの犯罪なのでしょうか?
冷静に考えて、一人の社員がこのような組織的な犯罪を企てられるとは思えないですね。
元・社員というところが、また臭いますよね(笑)トカゲのシッポ切り的な・・・・。
元社員の違法業務を黙認あるいは指示した上司がいるはずなんです。
そもそも、ゆがんだ愛社精神だけで自社製品のプロモーション活動しても、逮捕された社員にはほとんどメリットがありません。
あくまで僕の推測ですが、業務の内容からして、相当上級の管理職(経営層)の人間が関わっているんじゃないかと・・。
実はこの問題は、2007年4月にLancet誌で発表された東京慈恵会医科大学の「Jikei Heart Study」の段階から、多くの学者によって信頼性が低いとの指摘を受けていました。論文に怪しい点が多々あったからです。
仮にノバルティス日本法人が全くこの件に関与していなかったとして、内外からの様々な指摘に対して社内調査ならびに医師主導臨床研究の運用の中身について調査を行わないはずがありません。
遅くともこの段階(2007年4月以降)ではノバルティス側は自社社員の臨床研究への関与を知ることができたはずです。
しかし、実際にノバルティス日本法人が自社社員の臨床研究参加を認めたのは、2013年5月22日です。
まあ、あくまで推測の域を出ませんが、かなり怪しいですね。隠蔽しようとしていたと思われても仕方ないですね。
結局、これからの捜査の行方を見なければ、一個人の犯行なのか、会社ぐるみの犯行なのかわかりませんが。
ひとつだけ言えることは「ディオバンが虚偽の臨床研究成果に基づいて、他ARBより優位である」と誤認され医療の現場で医師に選択され、処方された(売上げた)という事実です。
本来ディオバンは降圧作用を考える限り、他ARBと同じく非常に優れた薬です。
不正な臨床研究結果を出さなくても相応に医師に処方薬として選択されたでしょう。ただ今より売上げは確実に小さいものになっていたことは明白です。
例えば、1000円のものを万引きしてバレたら、「すいません、1000円お返ししますから許して!」では済まされません。当然、民事罰と刑事罰の両方を科せられるでしょう。
今回の事件においては、懲罰的な意味も含めて、国はノバルティスファーマに過去レセプトで請求されたディオバンの薬剤料の全額を国庫に返還させるべきでしょう。(正確には、保険支払い分を各社健康保険組合、国民健康保険、政府管掌保険に返還、患者自己負担分を国庫に返納)
金額にしてざっと1兆2千億円になります。
ノバルティス日本法人は株式公開してませんので、正確な利益額は不明ですが、毎年売上げが3200億円ですので、ざっくり年間300億円くらいの純利益は出していると思います。
加えて製薬メーカーの内部留保はかなり多額ですので、仮に現金で5000億円あると考えたとしても、1兆2千億円の返還を求められたら一瞬で債務超過に陥り、ノバルティス日本法人は経営危機に陥ってしまうことになるでしょう。
ただ何らかのケジメはつけないとダメですね。
僕は製薬メーカーと大学と言うのは癒着しやすい関係にあると思います。
研究費の欲しい大学、論文を有名雑誌に投稿し名前を載せたい学者、そして自社製品の売上げを上げるため学会のお墨付きが欲しい製薬メーカー。
これから捜査が進むにつれて、さらにおぞましい内情が暴露されてくる気がします。
さらなる逮捕者が出てもおかしくないでしょう。
今回のノバルティス日本法人の臨床研究不正事件は氷山の一角じゃないでしょうか?
ノバルティス日本法人のみならず、製薬業界と医学会全体の問題と考えるほうが自然ですね。
パンドラの箱は開かれようとしています。良識と良心のある研究者によって、早い段階から不正が指摘されていた点がパンドラの箱に残った希望なのかもしれませんね。